本や、ニュースサイトとかで流れてくるネットの記事で、もっともらしい論文が紹介されたり、引用されたりして、なにか主張しているものがあると思うんです。
「どこどこ大学、◯◯教授の研究によれば……」みたいな……。
その研究の中身が「統計調査によると」とか「統計によれば」だった場合、そこに書かれている主張には注意したほうがいいです。
「孤独であってはならない」という結論が孤独な人を苦しめる
なんでこれを書こうとしたかというところから。
僕は『人づきあいが苦手な僕たちの逆襲』という本を書きましたが、その本の中で「孤独は不幸ではない」と書きました。何とかして広めたい考えです。
最近読んだ本に、「よい人間関係が大事。統計によると、いい人間関係を持つ人の方が健康で、仕事でも成功している」みたいなことが書いてあったわけです。
そりゃあ、統計を取ればそうなんでしょう。
「独身の人はそうでない人と比べて長生きしない」とかそんな調査もたしかあった気がします。
まあ、統計ではそうなんでしょう。
で、「何々大学の研究によると、孤独な人は早死にする」からと、「孤独はやめましょう」「孤独を避けましょう」「よい人間関係を作る努力を」と強い説得力で、そういう結論に持って行かれがちなんです。
でも、孤独って、避けようとして避けられるものではないんです。「人間関係が大事だ」という人は、自分が友達のいない人生を送ってないから、それが、わからないんでしょう。
自分の実感としても「人間関係は大事だ」から、そういう統計調査を紹介したくなるのでしょう。それはわかる。
でも、僕は、「人間関係が大事だ」などということは、言う必要が無い(というか言わない方がいい)ことだと思っています。すでにそれを享受できている人が聞いて頷くか、持っていない人が聞いて苦しむか、どちらかにしかならないことだからです。
「孤独は悪いものだ」とあまり言いすぎると、ひとりになってしまった人にとって、絶望しかないから、やめましょうよと僕は言いたいのですが、やめてもらえないでしょう。今後も、気付いていない人から、「孤独はダメだね」と、論文を持ち出された上で否定されることになるでしょう。
「ダメって言われても……」って感じです。
孤独な人は、そういうものから、自分で身を守るしかありません。
統計は自分が当てはまらなければ意味が無い
身を守る方法は、「そんなのただの統計でしょ?」と認識することです。
悪いのは、孤独そのものではなく、「孤独感」。つまり、ひとりでいることに辛さを感じることです。辛さを感じるから健康に悪いのです。
「孤独感」さえ乗り越えられれば、何の問題もなくなります(「孤独感」を乗り越える方法は……、僕の本をぜひ読んで欲しいです)。
ひとりにもメリットはたくさんあることがわかれば、無理に人間関係をよくしようとしなくて済み、結果、ストレス無く、好きな人とだけ付き合えるようになります。人間関係に努力なんかいりません。
「いい人間関係は、努力の結果ではなく、自分らしく生きた結果ついてくるもの。たとえついてこなくても、自分らしく生きられたならいいじゃない」ってことです。
そういう考え方が根付いていないから、孤独が悪いかのような統計が出てしまう。それでますます「孤独=害悪」のイメージが付き、「友達のいない自分は不幸なんだ」と思い込ませ、悩んで健康を害する人が増えるという悪循環が生まれるのです。
僕には相変わらず友達らしい友達はいませんが、孤独感を感じることはないし、幸福を感じることも多いし、それなりに健康です。孤独な人は不健康という統計があったとしても、当てはまらない自信があります。
統計なんて、自分が当てはまらなきゃ意味が無いのです。
顧客満足度90パーセントの商品も、自分が不満なら、自分にとって100パーセントダメな商品です。
統計結果が何パーセントだろうが、自分の現実は、自分にとって100パーセントの真実です。
「人に好かれている人ほど、収入が多い傾向にある」という統計があったとして(あるかどうか知らないけど、ありそうじゃないですか?)、統計ではそうかもしれないけど、人に嫌われているけど高収入の人もいれば、人に好かれているけど低所得の人もいるはずです。自分がその少数の方に入る可能性も十分にある。
なのに、その統計結果から「収入を増やすためには、人に好かれるようにするべきだ」と結論を出したところで、そんなに簡単にいくものでもありません。ただ、自分を苦しめる結果になるでしょう。
統計を持ち出されても、参考程度に聞くにとどめて、決して盲信しないことです。
間違った方に導かれているかもしれない
「長生きしている人を調べると、肉も魚も野菜も、なんでも食べる人が多い」という統計があるそうです。
その結果「なんでも食べる方がよい」という結論が主張されることになりがちです。
でも、僕はこの統計結果を「自分に合わない食べ物がなくて、何を食べても体に合う人だから長生きしている」可能性が高いと考えています。
自分に合わない食べ物がある人が、「なんでも食べる方がよい」に躍らされ、なんでも食べていたら、むしろ、体に負担がかかり、健康に悪いと思うのです。
「自分に当てはまらなければ意味が無い」どころか、自分と合わない場合、統計から導かれた結論によって、間違った方向に導かれてしまう危険性すらある。
食べ物に関しては、かなり「人による」ので、統計よりも、自分の経験の方が信頼できるはずです。
まとめ:統計に出会ったら
統計を持ち出した記事に出会ったら
・自分に当てはまるとは限らない
・統計は事実かもしれないけど、導かれた結論が正しいとは限らない
という点に注意しましょう。
はじめから、統計はあまり重視しないという立場でいるくらいがちょうどいいかと思います。
もう少し具体的に言うと、「うまくいっている人は、みんなこうしている」などと言われても、自分をそこに合わせようとするではなく、「そこから、うまくいくエッセンスを盗んで、自分は自分のやり方でうまくいかせてみせる」って考えるといいと思います。