noteで『三刀流修行~中井佑陽インタビュー~』を連載中

いろは歌との戦い

「いろは歌」と言えば「いろはにほへと……」と全てのひらがなを一回ずつ使った古い歌ですが、さすがに古過ぎるので、現代用に、新しく作り直して交換した方がいいと常々思っていました。

そして「その仕事、僕がやってあげようじゃないか」と、これまで取り組んできました。

そんな僕のこれまでのいろは歌との戦いの歴史と、今回新たな戦いに挑んだ結果を報告させていただきます。

これまでのいろは歌との戦い

2010年 最初の挑戦

はじまりは2010年のことです。もう10年以上前ですね。当時の記事を引用します。

ずるいなあと思うのは「いろはにほへと」の最後の「と」は「ど」と読ませるわけじゃん。昔は濁点の表記はなかったわけだけど、そういう風に選択肢が広い分作りやすいと思うのだ。

ということで、僕も「あ」~「ん」まで(46文字)を一回ずつ使って、意味の通る文章を作って、平成のいろは歌として小学校の国語の教科書に採用されたくなってきた。

僕の子供のころからの悪い癖で、こういうのを始めてしまうと、ごはんも食べず、寝るのも忘れ、見境なくやり続けてしまう。かなり時間を使ってしまった。

とりあえず2つできた。濁点で読ませるなどの、姑息な手は使わなかったところを評価してほしい。

https://note.com/nakaiyuhi/n/n478570cbb62a?magazine_key=mb0eaf3ea2c70

(引用元:https://note.com/nakaiyuhi/n/n478570cbb62a?magazine_key=mb0eaf3ea2c70

書いてあるように、まず、感じていたのは、昔は「゛」という記号がなかったので、清音で表記しても、濁音で読ませることが許されましたが、現代ではルール違反だろうということです。

また、現代では「ゐ」「ゑ」は使われていませんから、それも取り除いて作るのが筋だろうと考え、現代に使われているひらがな46文字で、濁音抜きで作ると決めました。

そうして出来上がったのが二つ。まず一本目。

「やくみつる ひたすらとしよりのふねをおそえ こむろさんちへゆけ ほうせきは あめにぬれても かまわない」

やくみつるさんに泥棒行為をさせようとしている歌です。

二本目はこちら。

「おかねをけちり ふろさえもないこのへやに しあわせゆめみてたぬきとすむよ ひるまはほられそう つんく」

つんくさんが貧乏生活をしてる感じの歌ですね。「ほられそう」がよくわかりませんけど……。

2014年 リベンジ

ブログで発表したあと(当時、一日5~6アクセスの人気ブログでした)、以上の二つの歌のどちらかが、「新いろは歌」として日本に定着するだろうと思っていたのですが、一向にその様子がありません。ナントカ書院から「ぜひ教科書に載せたい」との連絡がいつ来るかと思いきや、なかなか来ません。

本家のいろは歌と違って何かが足りないせいではないかと、反省した結果、「リズムが悪いせいかも」と思い至りました。

本家いろは歌は七五調でリズムよく作られています。だから千年以上歌われ続けているのでしょう。

リベンジを決意しました。以下のリンクはその時の記事です。

https://nakaiyuhi.blogspot.com/2014/08/blog-post_4.html#more

そして、出来上がったのがこちら。「へんなさら歌」です。

「へんなさら あつめるやくの ふせえりと ひおこして ゆきちをぬすむ ほうかまね それにはもたい みわけろよ」

ふせえりさんと、もたいまさこさんの役をみわけましょうという内容の歌です。課題だったリズムもだいぶよくなっています。これなら、ひらがなを習いたての子供達も喜んでうたってくれることでしょう。子供達が声をそろえて「へんなさら~」と歌う様子が目に浮かぶようです。

再リベンジ

固有名詞が出てくるのがよくないのかも

しかし、それ以降、なかなかこの歌が新いろは歌として国内に定着しません。

なぜだろうと思ったとき「固有名詞が多すぎるのでは?」と考え至りました。

「やくみつるとか、つんくとか、ふせえりとか、お前の歌には人の名前が出てきすぎるんだよ!」ってことだと思います。

確かに言われてみれば、千年後の人に「ふせえり」と言っても、ふせえりさんは千年後にもその名を残しているとは思いますが、未来の人にとっては身近に感じられる人ではないでしょう。

これでは千年残る歌とは言えないのではないか。「これは固有名詞を抜いて、また、作り直す必要があるな」と考えた僕は、またリベンジの時を伺っていました。

そして、先日、ついにその機会を作ろうと思ったわけでもないのに、固有名詞の出てこないリベンジバージョン制作。なんとなくやりはじめたら面白くなって、やってしまいました。

リベンジバージョン その1

二つめに紹介したつんくさんが出てくるやつは、途中まではリズムもよく、なかなかよかったのではないかということで、それをベースにして、後半だけちょっと入れ替えてみました。

「おかねをけちり ふろさえもない このへやに しあわせゆめみて たぬきとすむよ ひまはつらそう ほんくれる?」

ヒマはつらいので、退屈しのぎに本をくださいという、手紙のような歌になりました。文脈としても、それほど不自然ではないでしょう。ただ、最後がクエスチョンマークなのが炎上しそうで不安です。

別パターンも考えてみました。

リベンジバーション その2

「おかねをけちり ふろさえもない このへやに しあわせゆめみて たぬきとすむよ ほんまつらそう ひはくれる」

これも、最後の方だけ入れ替えたものです。「ほんま」というあたりに関西の人の感じが出ています。貧乏芸人さんが話題作りのためにタヌキと暮らすことにしたイメージです。アメトークのタヌキ芸人の回に出ようとしているのでしょうか。

ただ、気になるのは、やはりタヌキが出てくるという唐突さ。何でいきなりタヌキが出てくるんだろうという疑問が頭をよぎります。

そこで、もう少し深くメスを入れて作り変えてみることにしました。

リベンジバーション その3

「おかねをけちり ふろさえもない そのへやに しあわせゆめみて すむひとよ つらぬくほこは まるきうれたん」

どうでしょう。これなら完璧でしょう。ひらがな46文字を一回ずつ使い、リズムもよくて、固有名詞もタヌキも出てきません。しかも、日本語の流れとして自然です。

風呂も付いていないような、安い部屋に住もうとしている人に、メッセージを送っているのです。今後あなたが出世し、成功するために必要なものはなにかということを。「貫く矛」つまり、人の心を貫く武器は、丸きウレタンであると。

「今に見てろ、見返してやる……」「俺をバカにしたヤツを全員蹴散らしてやる……」と、世間に恨み辛みを抱きながら暮らしているその人に、そしてさらに鋭く矛を研ごうとしているその人に、世の中を敵のようにとらえて、とがって攻撃的な態度で人を傷つけるようでは、人は寄りつかず、いつまでも改善されることはないんだよと、夢見る幸せは訪れないよと伝えているのです。

逆説的だけれど、丸いウレタンのような柔らかな優しさで人を幸せにすることが、悪い現状を貫く矛となるのだと、この歌は教えてくれているのです。含蓄がありますね。最後が「ん」で終わるのも粋です。

こいつを「ウレタンうた」と名付けることにします。

とりあえずリベンジ成功

僕自作の新しい「いろは歌」。3つめの「ウレタンうた」を完成作として、提出します。これを教科書に採用したいナントカ書院の人からの連絡お待ちしてます。

とりあえず、今回はこれで納得。しかし、可能性は無限大。今回は以前作ったものをいじるだけでしたが、今後もし時間があったらまた完全新作にもチャレンジしたいです。

これを読んで、自分もチャレンジしたいという人も出てくるかもしれないので、一応、作りかたのコツを教えます。使いやすい文字、例えば二つの読み方ができる「は」とか「へ」、「か」「と」「て」「の」「に」のような接続詞っぽいもの、よく出てくる「あ」「い」「う」「ん」などは後に残して、「ゆ」「ふ」「れ」「み」「ち」「ぬ」「ろ」「わ」などの使いにくい文字を早めに使ってしまうことです。

是非やってみて下さい。もし、いいのができたときは、教えていただけたら、悔しい気持ちをかみ殺して「おめでとう」って言います。

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