今回は、先日出版した本、『人づきあいが苦手な僕たちの逆襲』に収録しなかった話を紹介します。
頭の中が幸せなら幸せ
『人づきあいが苦手な僕たちの逆襲』第6章「頭の中を幸せにする」の中で、幸せというのは、心で感じるものだから、頭の中が幸せなら幸せであるという話をしています。
頭の中さえ幸せなら幸せなのだから、考え方や工夫次第で、辛いことも、辛くなくしたり、楽しくしたりできるものです。
住居や衣服を高級にして、幸せに見えるような環境に身を置こうとするより、視点を変える力や、工夫する力を伸ばす努力をした方が、確実に幸福に近づけると僕は考えています。
そんな考えを伝えるための例として、下のような文を書いたのですが、本には収録せず、カットしました。
カットした理由は、僕はそう感じるけど、そう感じない人もいるかもしれないから。自分の感じ方は絶対ではないので、それを根拠に論を展開することはあまりしたくなかったのです。
あと、どっかで聞いたことのあるような話っぽいし、誰もが頷くようないい話みたいに聞こえそうだったのも、カットの理由です。
「自分の感覚に頼ったいい話なんてしたくない。やめたやめた!」という感覚です。
つまり、以下の文章は、嘘じゃないけど、人に向けて発信するには抵抗があるものです。まあ、それは僕の個人的な感覚だから、読む人にはどうでもいいんでしょうけど……。
人生で最後の一回だと思ってやる
「イヤだなあ」「面倒だなあ」「やりたくないなあ」と思うことがあるとします。
例えば、洗濯物を干すことが面倒だと思ったとします。
その時、あなたの目の前に妖精が現れます。そしてこう言います。
「今日だけやって、お手本を見せてくれたら、もう二度とやらなくていいように、代わりにやってあげる。明日から、君は寝ているだけで、洗濯干しは、全部終わっているようになるよ。ただし、君はもう二度と洗濯物に触れることもはできなくなるよ」
(そうか、もう二度とやらなくてもいいのか……。でも逆に言えば、二度とできないんだなあ……)
洗濯機から、服の重みを感じながら、かごに取り出す。
これが最後……。これももう、二度と味わうことはない……。濡れた服に触れ、水の冷たさを感じる。広げながら、洗濯ばさみに一つ一つ吊していく。
明日から、これは、もうやらなくていい。水の冷たさも、濡れた布の手触りも重さも、もう感じることはない……。そう思いながらやってみるのです。
体が自分の思い通りに動くという不思議さに意識を向けてみる……。
自分の足で歩いて、自分で体を動かして、自分の指で何かに触れて、些細なことでもすごく幸せなことだと思います。
明日からはできなくなると思うと、できる能力があることが、なんだかとんでもないことのような気がしてきます。
いつか、本当にできなくなる日が来ることを思うと、できる今やらなければ、もったいないような心持ちになります。
全ての洗濯物を干し、「これからも、このくらい自分でやるよ」と、妖精を追い返したら終わり。
家事に限らず、会社での慣れた仕事も、今日が最後の出勤の日だと思うと、ちょっと感慨深いものになるでしょう。
自分の頭の中が幸せなら幸せ。僕はそうやって頭の中で工夫しながら仕事をしているので、そんなに不満を感じることなく生きられています。